農業従事者の高齢化・減少が進む日本で新規就農者は非常に大切な存在です。そこで、国・各市区町村を中心に新規就農者のための支援策を行っています。今回は新規就農者の支援する制度の1つである、農協等向け新規就農者税制についてご紹介します。
農協等向け新規就農者税制とは
農協等が機械設備や農業用ハウスを取得し、人・農地プランの中心経営体に位置付けられた認定新規就農者に利用させる場合、その固定資産税を軽減します。 【令和2年度創設】
農林水産省/認定新規就農者制度について
農業協同組合等が取得した償却資産(土地・家屋以外の事業用資産)を認定新規就農者に利用させることで、初期投資の負担軽減を図るための令和2年度創設された税制です。これは、 農業協同組合等が取得した償却資産に対して新たに課税される年度から5年度分に限り、固定資産税の課税標準が3分の2に軽減されます。
農地と固定資産税
固定資産税=固定資産の評価額(課税標準額)×税率
固定資産税とは、土地を所有していると毎年かかる税金のことを指し農地もそれに該当します。農地は「一般農地」「一般市街化区域農地」「特定市街化区域農地」「生産緑地」と4種類の農地区分があり、それぞれ固定資産税は異なります。
農協等向け新規就農者税制 特例措置の内容
①農協等が②一定の償却資産を③適用期間に取得し、④人・農地プランの中心経営体に位置付けられた⑤認定新規就農者に③利用させる場合、その償却資産に対して新たに課税されることとなった年度から5年分に限理、課税標準が3分の2に軽減されます。
https://www.maff.go.jp/j/new_farmer/zeisei/attach/pdf/nintei_syunou-2.pdf
上記①〜⑤を解説します。
①対象
農業協同組合等とは、農業協同組合・中小企業等協同組合(事業協同小組合、企業組合を除く。)、農業協同組合連合会、農事組合法人の5つを指しています。
農業協同組合等が税制特例措置の対象となっている理由として、農業協同組合等が、取得した機械装置等を新規就農者に利用させることで、新規就農者の初期投資の負担が軽減されることになります。併せて、本税制特例措置を契機として、農協協同組合等や市町村を中心とした地域ぐるみでの新規就農者の受入体制づくりが各地で進められることも期待し、地域農業を支える公益性を有する団体である農協協同組合等を税制特例の対象とするこになりました。
②一定の償却資産
償却資産とは、固定資産税の対象となる資産のことです。土地や家屋などの事業用に使うものを償却資産と言い、会社や個人で事業を行っている方が事業のために用いることができる構築物、機械、器具、備品等が対象となります。
機械及び装置:取得価額 30〜330万円以下 (一つあたり)
器具及び備品:取得価額 30〜600万円以下(一つあたり)
建物附属設備:取得価額 30〜600万円以下(一つあたり)
構 築 物 :取得価額 30〜2,000万円以下(一つあたり)
これらは中古品・自ら製作するものも対象となりますが、個別ケースにおいて判断に迷われる場合、所在の市町村までご確認ください。
③適用期間
令和2年4月1日〜令和6年3月31日までに取得し、かつ、利用させるものが対象となります。
④人・農地プランの中心経営体
人・農地プランとは、将来にわたって地域の農地を誰が担っていくのか、誰に農地を集積・集約化していくのか、を決めていくプランのことを指しています。中心経営体とは、「認定農業者」「認定新規就農者」「集落営農組織」「基本構想の目標所得水準 達成者」であり、将来(5~10 年後)にわたって地域の農地利用を効率的・ 安定的に担う農業者が位置付けられています。
つまり、上記のような農業者が話合いに基づき、地域の農業において中心的な役割を果すことが見込まれる農業者(中心経営体)、地域における農業の将来の在り方などを明確化し、市町村により公表するもののことを指しています。
⑤認定新規就農者
認定新規就農者とは、新たに農業経営を営もうとする⻘年等が、経営を開始してから5年後の目標やその達成に向けた取組等を内容とする青年等就農計画を作成し、その計画を市町村に認定されたものを指します。
農協等向け新規就農者税制を受けるために
認定新規就農者とは
農林水産省によると、認定新規就農者とは、区市町村から農業経営基盤強化促進法第14条の4に規定する青年等就農計画の認定を受けた農業者をいいます。
青年等収納計画の対象者とは、新たに農業経営を営もうとする青年等で、以下に当てはまる方を指します。
- 青年(原則18歳以上45歳未満)
- 特定の知識・技能を有する中高年齢者(65歳未満)
- 上記の者が役員の過半数を占める法人
農業経営を開始して一定の期間(5年)を経過しない者を含みます。
認定農業者は含みません。
農林水産省/認定新規就農者制度について
上記条件を満たし、認定新規就農者になると、農協等向け新規就農者税制を受けることができます。
認定農業者とは
農業にやる気と意欲があり、職業として農業に取組んでいる農業者や農業法人、あるいはこれから農業経営を営もうとする者を市町村が認定し、関係機関・団体が重点的に支援措置を講じようという制度です。平成5年に制定された「農業経営基盤強化促進法」で創設されました。
認定農業者ってなに?/沖縄県
認定農業者の対象は以下に当てはまる方を指します。
- 男性、女性の別は一切問いません。
- 兼業農家や新規就農をめざす非農家も対象。
- 農地を持たない畜産や施設園芸なども対象。
- 共同経営を行う夫婦なども対象。(家族経営協定等の取り決めが必要)
- 農業経営を営む法人など。
認定農業者の認定条件は以下に当てはまるものを指します。
- その計画が市町村の「農業経営基盤の強化の促進に関する基本構想」に照らして適切か。
- その計画が達成できる計画かどうか。
- その計画が農用地の効率的・総合的利用に配慮したものか。
認定新規就農者と認定農業者の違いは?
認定新規就農者は、「新規就農者を対象」にしており、認定農業者は「農業経営の改善をめざす既存の農家を対象」にしています。
認定農業者の対象者は年齢や性別に関係なく、法人も対象です。新規就農を目指す非農家や兼業農家も対象になるなど、広く認定を受けられるといった違いがあります。農協等向け新規就農者税制を受ける場合には認定新規農業者にならなくてはいけないので注意しましょう。
適用手続きについて
ここまでは新規就農者税制についての説明でした。以下から、適用方法についてご説明いたします。
流れとしては「償却資産の取得」「青年等就農計画の認定」「人・農地プランの話合い~公表」「償却資産申告」「市による確認」の5STEPです。以下に1つずつ解説します。
①【償却資産の取得】
農協等が償却資産を取得したあと、新規就農者はリース契約などの手続きを締結をします。
②【青年等就農計画の認定】
新規就農者が市に青年等就農計画の認定申請を行い、 市は審査の上認定をします。
③【人・農地プランの話合い~公表】
人・農地プランに関わる話合いにおいて、新規就農者を中心営体として位置付け、市はその話合いの結果について公表します。
④【償却資産申告】
償却資産申告に際して、納税書類に契約書の写しを 添付し、市課税課へ提出します。
⑤【市による確認】
市は、当該契約書の償却資産の利用者が認定新規就農者かつ人・農地プランにおける中心経営体に位置付けられていることを確認する。
※①〜③は順不同
※償却資産所在の市町村と、認定している市町村、中心経営体に位置づけられている人・農地プランのある市町村が異なる場合は、⻘年等就農計画認定書の写し、別市町村の地域において人・農地プランの中心経 営体に位置づけられていることの証明書の添付が必要。
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その他の税制紹介
農協等向け新規就農者税制の他にも賢い制度はいくつかあるので簡単にご紹介します。
農業次世代人材投資事業(経営開始型)
新規就農する方に向けて、農業経営を始めてから経営が安定するまでの最大3年間、月12.5万円(年間150万円)を定額交付するものです。
この農業次世代人材投資資金は交付金なので原則として返す必要はありません。
※ただし、離農された場合は返還義務が発生する場合があります。
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無利子資金制度(青年等就農資金)
農業経営の開始に必要な機械、施設の取得等のための資金について、無利子で借り入れすることができます。
営農に必要な機械・施設の整備等を支援するために設けられており、上限3,700万円(特認限度額1億円)となってます。
償還期限は17年以内で、据置期間が最長5年あります。
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農業経営基盤強化準備金制度
農業経営基盤強化準備金制度とは、交付金を積み立てた場合にその分を課税所得から控除できるというものです。課税所得から控除できるので、税金の支払いが少なくなります。さらに、この積立金を取り崩して農地や農業用機械などを買った場合、一定の金額を課税所得から控除できます。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。「農協等向け新規就農者税制」を中心に農家になりたい人向けの制度をいくつかご紹介しました。この他にも農家になりたい人向けの制度はたくさんあります。制度を賢く利用して農家を目指してみませんか?
みんなで農家さんは、『農家人口の減少』という日本農業の根本的な課題を解決するために『稼げる農家さん』をコンセプトに、新規就農へ興味を持ってくれる人を増やす取り組みを行なっています。
様々な課題を持つ農業において、充実した研修・収益面以外にも、農業事業に参入するまでのサポートも行なっています。
ぜひご一読ください。
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